とくなが久志奮闘録

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「憲法9条に自衛隊明記」 首相答弁にツッコミを入れる

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憲法9条に自衛隊明記の理由

安倍首相は、憲法9条に自衛隊を明記する憲法改正を狙っています。国会では、この点について野党から質問が投げかけられています。それに対する首相の答弁に、ツッコミを入れてみたいと思います。

 

憲法9条に自衛隊を明記する理由について、首相はこう答弁しています。

自衛隊員に、憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれと言うのは無責任だ。そうした議論が行われる余地をなくすことが私たちの世代の責任ではないか。

 

おいおい、自衛隊員にそんなこと言う国民はいないでしょう。国民の大多数は自衛隊を肯定的に捉えていますし、その存在を十分に認めていることは、各種世論調査でも明らかです。

 

国民の大多数は、自衛隊が憲法違反か否かという判断なしで支持しています。ただ、憲法の専門家の間では異なります。

 

  現在の自衛隊の存在は憲法違反にあたると考えますか。

  1. 憲法違反にあたる・・・50人
  2. 憲法違反の可能性がある・・・27人
  3. 憲法違反にあたらない可能性がある・・・13人
  4. 憲法違反にはあたらない・・・28人
  5. 無回答・・・4人

 

朝日新聞の憲法学者アンケートの結果では、122人のうち77人が「憲法違反」「憲法違反の可能性がある」と答えています。実に63%の憲法学者が自衛隊を違憲としているのです。

 

では、なぜ、憲法違反の自衛隊は存在し続けているのでしょう。それは、歴代の政権が一貫して、自衛隊は憲法が認めているとの解釈を保ち続けているからです。

 

   自衛隊についての政府統一見解(昭和29年12月22日)

憲法9条は、独立国としてわが国が自衛権を持つことを認めている。従って、自衛隊のような自衛のための任務を有し、かつその目的のため必要相当な範囲の実力部隊を設けることは、何ら憲法に違反するものではない。

 

 

安倍政権もこの見解・解釈を踏襲しているわけで、そのことを国民に丁寧に説明すればよいのです。(すでに、国民は理解しているからこそ自衛隊を評価しているのですが。)ですから、憲法違反云々というのは改正の理由にはなりません。

 

だいたい、2年前に国会で強行採決された安保法制は、学者の8割以上が憲法違反だとしていました。しかし、「そんなの関係ねぇ」とばかりに強引に押し通したのは誰だったのでしょう?

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9条改正の立法事実 

次に、9条改正の立法事実を問われて、こう答弁しています。

 

現行の9条2項の規定を残した上で、自衛隊の存在を憲法に明記することで、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない。

 

おい、質問の答えになっていないぞ!立法事実がないことを暗に認めていると考えざるをえません。

 

立法事実とは、法の合理性を支える社会的・経済的・文化的な事実をいいます。法の制定・改正をしなければ、こういう社会的損失がある(立法事実)という説明です。例えば、スマホを見ながら車の運転している人が増加して事故が多発していること(立法事実)を受け、スマホ運転の規制の法改正を行うということです。

 

一般的に、立法事実が存在しなければ、憲法・法律は制定・改正できないのが原則です。といっても、安保法制制定の立法事実はないと内閣法制局長官が答弁していたにもかかわらず、堂々と強行採決しましたが。

 

あえて、立法事実があるとすれば、それは自衛権についてです。首相が「変更が生じることはない」と言ってしまった「自衛隊の任務」に関わります。

 

現行の9条において、自衛権は認められています。しかし、自衛権を行使する範囲は明確な定めがありません。解釈によっては、アメリカの世界戦略の片棒を担いで、地球の裏側まで自衛隊が行くことも不可能ではありません。

 

時の政権の恣意的な解釈によって自衛権の行使の乱用を防ぐために(立法事実)、憲法改正して、自衛権の範囲を規定するというのなら成り立ちます。

 

また、首相サイドの議論で言うなら、ある問題に対して国際社会が共同して軍事的行動に出ようという際に、「憲法が許すかどうか疑問」ということで躊躇していたら、世界で孤立してしまう(立法事実)から、自衛権の範囲を書き込もうというのも同様です。

 

立法事実を答えない理由

では、なぜ、自衛権に言及しないのでしょうか。気鋭の憲法学者の木村草太・首都大学東京教授が明確に説明してくれています。ちなみに、木村草太教授は、今後、日本の憲法学をリードする存在となり、木村憲法学がスタンダードになると思っています。

 

9条を改正して自衛隊を明記するならば、その任務についても明記しなければならない。その際、個別的自衛権までだと書いてしまうと、安保法制が違憲だということが明確になってしまう。

一方、集団的自衛権を明記するとなると、今度は憲法改正の国民投票で安保法制の支持を問うことになってしまうが、世論調査を見ると、採決時の世論調査を見ると、否決されてしまう可能性も大いにある。

いずれにせよ、個別的自衛権、集団的自衛権のどちらを明記しても政権的にはまずいということになる

 

テレビが伝えない憲法の話 (PHP新書)

テレビが伝えない憲法の話 (PHP新書)

 

憲法改正となれば、最後は国民投票によって決します。その際の何らかのお役に立ててればと思います。

以上、『「憲法9条に自衛隊明記」 首相答弁にツッコミを入れる』でした。

  

木村草太の憲法の新手

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