◆平昌五輪への疑問・文句
平昌オリンピックの真っ最中です。
テレビにかじりついて応援しながら、ふと、疑問に感じた人も多いはずです。あるいは、テレビ画面に向かって文句を言っている人もいるでしょう。(私もその一人)
「どうしてフィギュアスケートを午前10時からやるのか?」
「なぜ、ジャンプはこんなに遅い時間にやるのか?日をまたいでの試合なんてありえないだろう!」
「こんな強風でまともなプレーが出来るはずがない!」
五輪開催地は韓国なので時差はありません。ライブで楽しめると思っていたのに、何だかヨーロッパか南米あたりでやっているみたいで、時差を感じてしまいます。
◆早朝・深夜の競技日程のなぞ
フィギュアスケートは午前10時にスタートし、ノルディックスキー・ジャンプは午後9時半にスタート。ジャンプは終了が日付を越えていました。
なぜ、このような時間帯に開催されるのか?
競技日程はIOC(国際オリンピック委員会)の収入源となるテレビ放映権に配慮されているからです。そのため、一部の競技ですが、アメリカやヨーロッパのゴールデンタイムに合わせて時間が設定されているのです。
フィギュアスケートやスノーボートはアメリカで人気が高いため、アメリカのゴールデンタイムにテレビ中継されるよう、平昌現地時刻の午前10時スタート。
スピードスケートやジャンプはヨーロッパで人気が高いため、ヨーロッパのゴールデンタイムに合わせて、現地時刻の夜遅い時間帯にスタートということになります。
実際、全世界にテレビ中継を配信するためにIOCが設立した「五輪放送サービス」は、「競技日程はテレビ視聴者を最大化するためにデザインされている」と話しています。
◆テレビに配慮した弊害
こうした日程の組み方で悪い影響を受けたのが、スノーボードの女子スロープスタイル。
悪天候のため、予選が中止となり、決勝は試技が3回から2回に変更されました。それでも突風はやまず、出場選手全員が1度は転倒したとのことです。
オーストラリア代表の中で最年少となる17歳のテス・コーディは、前日の練習で転倒して左膝を骨折して棄権。
この日の決勝を15位で終えたオーストリアのアンナ・ガッサーは、「すでに多くの選手が風のせいで怪我をしていた。昨日も朝の練習は危険だった」と言う。
さらに、この日の決勝は「くじ引き」のようだったというガッサーは、「フェアな競技だったとは思わない。強行した主催者には少し失望している」と述べた。(headline.yahoo.co.jp)
私も、スノーボードはテレビで観ていましたが、ジャンプした際に横風の影響で空中でバランスを崩しているのが、素人目にも明らかでした。選手が真っ白な地面にたたきつけられる姿は、本当に痛々しいものでした。
これもテレビとの関係の結果です。日程が枠で押さえられているため、延期することもままならないのです。
◆「顧客第一」の五輪
IOCの収益の80%がテレビ放映権料です。そのテレビ放映権料の最大の顧客が約51%を占めるアメリカで21億2千万ドル、2番目がヨーロッパで9億4千万ドルとなっています。
つまり、顧客のニーズに合わせて競技日程が組まれるため、変な時間帯で試合が行われ、悪天候でも強行されるということです。
IOCは「アスリート・ファースト(選手第一)」といっていますが、これでは「顧客第一」といわれても仕方ありません。
五輪を開催するには多額の予算を必要とし、その財源としてテレビ放映権料は欠かせないというのは理解できます。巨額の放映権料を払う欧米の視聴者に配慮することも理解できます。
しかし、厳しいトレーニングを積み重ねてきたアスリートが、最高のパフォーマンスが出来るよう環境を整えることは、主催者の責務です。
欧米の視聴者も、鍛えられた選手の素晴らしいプレーを期待してテレビを観ているはずです。転倒せずにゴールまでたどりつければ上位に入る、というような競技を観ることを楽しんではいないでしょう。
「これは韓国が悪い」とネット上では騒がしいですが、東京五輪でも同様の問題が起らないとも限りません。是非とも、「アスリート・ファースト(選手第一)」を貫いた五輪にしたいものです。
以上、『【平昌五輪】テレビに配慮した五輪の弊害』でした。