俳優の阿部寛さんが、台湾の地震の義援金として1千万円を寄付したことが話題となっています。
台湾との間には過去にも、こうした市民の心が通い合った事例があります。政治がぎくしゃくしても、市民同士の心の交流があれば外交関係はより強固になります。
◆阿部寛さん、義援金1千万円を寄付
2018年2月6日、台湾東部の花蓮市でマグニチュード6.4の大地震(死者17名・不明者2名)への義援金として1千万円を寄付すると表明していた俳優の阿部寛さんは、台北駐日経済文化代表処(台湾の駐日大使館にあたる)を訪れ、義援金を手渡しました。
阿部さんは、地震発生時に台北市内に仕事で来ていて、地震を体験。翌々日に出演したイベントで、哀悼の言葉を述べるとともに、「義援金として1千万円を寄付する」と述べていました。
謝長延代表(大使にあたる)は、阿部さんに対して感謝状を贈り、台湾国民を代表して感謝の言葉を述べたということです。
阿部さんの男気、ほれぼれします。誰でも真似できるものではありませんが、心意気だけは持っていたいものです。
他にも、日本と台湾との間には、互いの心が通いあったからこそのエピソードがいくつかあります。
◆2013年 WBC日本vs台湾戦
忘れもしないのが、2013年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本対台湾戦です。
東日本大震災では多くの国々から大きな支援が寄せられましたが、中でも群を抜いていたのが台湾でした。寄せられた義援金は280億円と最も多額の義援金を寄付してくれました。
震災から1年が経過した時、政府主催で式典が開催され、支援を頂戴した国の代表や民間機関などが招待されました。外国の代表はみな上座の来賓席に着席させたのに対し、台湾の代表者は民間機関の人と同じ席に座らせたのです。
日本は台湾と国交がないため、民間人としてしか扱えないというのが外交上のルールだからというのが理由ですが、「あんなに支援してくれた台湾の代表に失礼だ」という声があがったのをよく覚えています。
そして、前出のWBCです。台湾との試合の前に、日本人からSNSでメッセージが発せられました。
【拡散お願いします】WBCで台湾がやって来る!東京ドームで観戦予定の方、東日本大震災での台湾からの義援金のお礼を横断幕やプラカードで伝えて下さい。台湾へ感謝のメッセージを送る最大のチャンス。日本と台湾の友情が永遠であることをWBCを通して伝えて下さい(日台戦は3月8日)
これを受けて、当日の試合での観客席にはこんな光景が・・・。
試合は日本の逆転勝利に終わりましたが、試合終了後に台湾代表チーム全員がグランドに出てきて、深々と頭を下げたのです。
ずっとテレビで観戦していましたが、このシーンはほんとにびっくりして、そして胸がじーんとなりました。涙腺が弱くなった今だったら泣いていたでしょう。
政府どうしではどうにも出来なかったことが、市民の心と心がつながることで、熱い友好関係を結ぶことができたわけです。
◆まとめ
繰り返しになりますが、日本と台湾とは国交がありません。もっというと、日本は台湾を国家として認めていません。
日本も台湾も閣僚はじめ政府関係者は、双方の国を正式に訪問することができません。
そういうわけですから、今回の地震でも、日本政府として義援金を出すことはできません。日本から専門家チームが台湾に派遣されましたが、これは消防庁と海上保安庁の有志がボランティアで現地に乗り込んだという体裁を整えなくてはならないのです。
また、台湾とは貿易の面で難しい課題を抱えています。日本固有の領土である尖閣諸島の領有権を台湾は主張しています。
こうした政治・外交のややこしい関係のあるなか、阿部さんの行動は必ず犠牲者とご家族の心に届いたと思います。
また、阿部さんだけでなく、被災地で博多ラーメン200食をふるまった日本人もいました。
たとえ政府どうしが難しい関係におちいっても、市民の心が互いにつながれば、必ず良い方向に答えが出るものです。
日本の隣国には、台湾以上に困難な課題がたくさんある国があります。台湾同様、国交のない国もあります。そうした国々とも、市民どうしが心でつながることができればと、阿部さんの快挙をみて感じました。
以上、『阿部寛さんのような心が外交を強くする』でした。