とくなが久志奮闘録

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松本潤主演『99.9ー刑事専門弁護士ー』 99.9%裁判有罪率の3つの理由

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|『99.9ー刑事専門弁護士ー』

松本潤主演『99.9ー刑事専門弁護士ー』が好評のようです。

 

気になるのが99.9という数字。「日本の刑事事件における裁判有罪率(起訴された際に、裁判で有罪になる確率」と、公式サイトでは説明しています。

 

裁判有罪率が99.9%って、ほとんどが有罪になるということ。世界的にみても、これはかなり高い数字といえます。なぜ、こんなに高い数字になるのでしょうか。私は、3つの理由があると思います。

 

 

|理由その1ー被告人が罪を認めている裁判が大半

日本の刑事裁判で、有罪率がとても高い最大の理由は、起訴された被疑者のほとんどが、最初から罪を認めているからです。

 

被疑者が最初から罪を認めていて、あとは刑の重さを決めるだけの「量刑裁判」は、刑事裁判全体の90%前後を占めています。

 

被告人自身が有罪だと認めている裁判が大半なのですから、有罪率は100%近くとなるのは当然です。

 

|理由その2ー有罪を見込める被疑者だけを起訴

しかしながら、無罪判決が出る可能性のある、被告人が罪を認めていない「否認裁判」の有罪率も97%となっています。「俺は何もやっていない」と訴えても、100人に3人しか無罪とはならないのです。

 

日本の刑事手続きは、逮捕された被疑者は検事によって仕分けが行われます。証拠などが十分ではなく、無罪となる可能性が高い事件については、起訴まで持ち込まずに「不起訴処分」にすることがあります。

 

一方で、有罪を立証できるだけの事実と証拠が明確にあると判断した場合は、必ず、起訴することになります。

 

逆に言えば、有罪を立証できるから起訴する、有罪の立証が難しいから起訴しない、ということです。こういうことなら、裁判になれば有罪となる確率が高くなるのも理解できます。

 

このことは、警察の検挙率のからくりと同じかもしれません。例えば、夫婦間の暴行、親族間の窃盗・詐欺、いじめ、ストーカーなどは、「当事者どうしで話し合って解決しなさい」と言って警察が事件として取り上げないケースがあり、それが犯罪件数を少なくさせているとも指摘されています。

 

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|理由その3ー予断をもつ裁判官

「無罪判決を出す裁判官は出世できない」と聞いたことがあります。『99.9ー刑事専門弁護士ー』第3話でも、無罪判決を出した裁判官は地方に飛ばされていました。

 

こういう噂話的なものは横に置くとして、検察が有罪を確信して起訴した裁判に無罪判決をだすことは、かなり勇気のいることだと思われます。

 

裁判官としては、有罪に疑いが生じたとしても、「起訴されているのだから証拠は十分だ」「否認しているのは、単なる言い逃れだろう」と考えても不思議ではないです。

 

「99.9%の有罪率」というお題目に、裁判官が思考停止しているとすれば、とても悲しいことです。

 

『裁判所の正体』という著書の中で、瀬木比呂志・元裁判官は述べています。

 

40年近くの裁判官生活の中で、約30件の無罪を確定させた裁判官もいるんです。一方、ほかの刑事系の裁判官は無罪はほとんどなし、ということなんですね。

でも、ある裁判官のところだけ無罪事件が集まったということは、きわめて考えにくいじゃないですか。

要するに、本来なら、おそらくほかの人たちにも30件くらいはあるんですよ。少なめにみて、1人20とか15だって、相当な数です

                     瀬木比呂志・清水潔『裁判所の正体』より 

裁判所の正体:法服を着た役人たち

裁判所の正体:法服を着た役人たち

 

 

瀬木氏の話に沿えば、「99.9%の有罪率」にひるんで、1人の裁判官が15件近くのえん罪を生んでいるのかもしれません。

 

以上、『松本潤主演「99.9ー刑事専門弁護士ー」 99.9%裁判有罪率の3つの理由』 でした。

 

TBS系 日曜劇場「99.9 ー刑事専門弁護士ー」オリジナル・サウンドトラック

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