とくなが久志奮闘録

日々の生活や仕事のなかで考えたことを、ふんわりと書き連ねていきます。

エンゲル係数上昇はアベノミクスの負の成果 ウィキペディアが忖度?

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◆『ウィキペディア』編集凍結

一定のルールの下で誰でも自由に編集に参加できる『ウィキペディア』で、生活水準を測る指標として有名な「エンゲル係数」のページが凍結され、編集ができない状態となっています。

 

この状態になったのは、国会でエンゲル係数についての質問に首相が答弁した直後のこと。何やら陰謀めいた策動でもあるのでしょうか。

 

 

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◆エンゲル係数とは?

エンゲル係数とは、中学校社会科で習う経済指標です。

 

家計の消費支出総額に占める食料費の割合で、次の計算式で算出されます。

 

エンゲル係数(%)=「食料費」÷「消費支出」×100

 

現在、見ることの出来るウィキペディアにはこう記されています。

 

エンゲル係数の値が高いほど生活水準は低いとされる。これは、食費(食糧・水など)は生命維持の関係から(嗜好品に比べて)極端な節約が困難とされるためであり、これをエンゲルの法則という。

 

実は、このエンゲル係数が上昇しているのです。

 

総務省の家計調査によると、2005年に22.9%で底を打ち、その後は横ばいが続きますが、第2次安倍政権の2013年以降は上昇に転じ、2016年には25.8%まで4年連続で上がっています。2017年もいわば高止まりの状況です。

 

 

◆国会での安倍首相の答弁

エンゲル係数上昇をふまえて、参議院予算委員会で民進党の小川敏夫議員が質問しています。長くなりますが議事録から引用します。

 

小川議員:アベノミクス、5年たちました。生活の豊かさを示すエンゲル係数は顕著に上がっているという状況でありまして、国民生活は苦しくなっておりますが、この点について、総理の所感をお伺いいたします。

 

安倍首相:アベノミクスにより、極めて短い期間でデフレではないという状況を作りだす中、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しており、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれています。(中略)

また、エンゲル係数についてでありますが、二人以上の世帯のエンゲル係数は2005年を底にして上昇傾向にありますが、これは物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれているものと思います。

 

小川議員:食生活の変化、生活様式の変化といっても、それは何も安倍政権になってから変わったんじゃなくて、ずっと長い間の変化があるわけでありまして、エンゲル係数はアベノミクスが始まってから上がっている。国が行った調査でエンゲル係数が上がっている、国民の生活は苦しくなっている。これが、アベノミクスの実質じゃないですか。もう一度、お答え下さい。

 

安倍首相:景気回復期にはパートで働く方々が新たに仕事に、パートとしてスタートします。その関係から、実質賃金、また消費税も上げましたし、安倍政権になってデフレが止まって物価が上昇し始めたということで、それが名目賃金に影響しているわけでございますが、大切なことは、みんなの稼ぎである総雇用者所得は確実に上がっているということではないかと思います。

 

毎度のことで直接、答えていませんので、少し解説が必要かもしれません。

 

要は、安倍首相は、デフレから脱却して生鮮食料品の価格が上がったこと、景気が良くなったから高級食材とかレトルト食品を買う世帯が増えたからであって、全体として「全国津々浦々で確実に経済の好循環」が生まれているから、何も問題はないと言いたいわけです。

 

個人的には、この理屈がさっぱり理解できません。安倍首相の言う「食生活」や「生活スタイル」の変化が背景となってのエンゲル係数の数値です。背景が変化したからこそ、係数の数値が上昇したのです。

 

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◆実質賃金の低下が問題

エンゲル係数は生活水準が高くなるにつれて数値が低くなるのは経済学の常識です。一般的に、途上国では高く、先進国では低くなっているのもそのためです。

 

アベノミクスでエンゲル係数が上昇した理由は明らかです。

 

大規模な金融緩和によって円安が進行し、輸出型大企業の収益は過去最高水準となりましたが、輸入品を中心に物価は上昇しました。

 

物価が上昇しても、賃金がその分上がれば問題はありません。しかし、実質賃金は下降傾向にあります。2017年は下げ止まっている状況です。

 

先に示したエンゲル係数の計算式を思い出してください。賃金が下がって消費支出も連動して下がり、そこで食料品があがれば、当然、係数の数値が高くなります。小学生でもわかる理屈です。

 

賃金の減少が家計を圧迫し、減少した賃金から支出にまわす総額が減る中で食料品の価格が高騰して、さらに家計を圧迫すしているということです。

 

小川議員も指摘したように、エンゲル係数の上昇は、アベノミクスの負の成果の1つと言わざるを得ません。

 

ニッセイ基礎研究所のはじ浩一専務理事も指摘しています。

 

ここ数年の上昇は、所得が伸びない中で食品値上げの影響が大きく、生活が苦しくなったとみることができる。高齢者や共働き世帯が増え、外食や中食(弁当や総菜など)が食費を押し上げているのは長期的要因だ。

所得上昇でエンゲル係数が下がるのは明らかだ。生活に密着した指標として今も重要な意味がある。

 

 

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◆ウィキペディアが忖度?

安倍首相が国会で答弁した翌日、突然、ウィキペディアが書き換えられました

 

「現在では(エンゲル係数の)重要度が下がっている」と首相の答弁を踏まえた(忖度した?)内容に書き換えられていました。しかも、出典は某経済小説というから驚きです。

 

さすがに「出典が経済小説とはおかしい」とのクレームが相次ぎ、別の書き込みも殺到したため、サイト管理者が編集を凍結したとのことです。

 

今や、わからないことがあればネットで調べる時代。調べた情報が時の政権に忖度した内容ばかりというのでは・・・。

 

神戸女学院大学の内田樹教授は指摘しています。

 

議論の土台となる事実が書き換えられると対話が成立せず、社会全体の知性が腐る。ファクトチェックに労力がかかり必要な政策論議も始まらない。道徳上の問題というより経済合理性を欠くと言うべきだ。

 

以上、『エンゲル係数上昇はアベノミクスの負の成果 ウィキペディアが忖度?』でした。