◆高校部活も週2日休養へ
運動部活動に関するガイドラインを健闘しているスポーツ庁の有識者会議において、すでに固まっている中学校での活動時間や休養日を設ける基準を高校にも適用することが了承されました。
高校にも適用される中学部活動のガイドラインは以下の通りです。
中学校部活動に関するガイドライン
- 少なくとも平日1日、週末1日以上の計2日以上を休養日とし、活動時間は平日2時間、週末3時間に抑える。
- 教育委員会や学校法人は「運動部活動の方針」を作り、休養日や活動時間を設定する。学校ごとでも作成する
- 季節ごとに違う種目に取り組むなど、競技志向だけでない多様な運動部を設置し、多くの生徒の運動機会をつくる。
- 外部人材の部活動指導員を任用する。
つまり、平日の月曜から金曜日のうち1日、土曜・日曜のうちいずれか1日、部活動を休みにしようというものです。
スポーツ庁は3月に指針を最終決定するとしていますが、私の子が通う学校では、同様の趣旨を4月から実施すると記したプリントが配付されていますので、全国的にこの4月から実施されるとみていいかと思います。
なお、中学校部活動の休養については、本ブログでも取り上げましたので、そちらをご覧ください↓↓
◆根性論は昔話になりつつある
一昔前までは、運動部の部活動といえば、根性論花盛り。
練習中に水を飲むなどもってのほか、非科学的・非医学的・非人道的な練習を炎天下で毎日やっていたものです。
今や、根性論だけでは逆効果で、むしろ積極的に休養日を設けている学校が主流となっています。
全国大会常連の強豪校でも、リフレッシュによる効果や怪我が少なくなる、集中力が高まるという効果も確認され、積極的に休養日を設けているようです。また、それが試合での好成績につながっているといいます。
全国大会6度の優勝を誇る東福岡高校ラグビー部の藤田雄一郎監督はこう述べています。
たくさん練習すれば強くなるというわけではない。練習で厳しい環境にばかりいては疲れてしまうので、気分転換が必要。それは怪我の予防にもなる。ただ、休みすぎは良くない。どうするのがベストかと、部員に考えさせるのが大切。
◆抵抗するのは親?
子どもには好きなことを思う存分やらせてやりたいと親なら誰もが願います。
でも、思う存分やろうにも、学校がその機会を奪うかのように親の目に映った場合は大変です。
ある野球の強豪校で3日間、練習を休みにしたら、「こんなにたるんでいては、甲子園はおぼつかない。子どもの夢を奪うのか!」と保護者が怒りだし、「監督解任を求める決議文」が校長宛に出されたことがあるそうです。
親の世代は、一昔前の根性論で育ちましたので、今の主流の考えが理解できないのもわからなくはありません。
◆抵抗するのは同窓会?
今、人口減少と少子化が同時進行していて、高校は公立私立を問わず、生徒を集めるのに四苦八苦しています。
高校の校舎に、「○○ 全国大会出場!」と大書された垂れ幕をかかているのをよく見かけます。
これは、在校生を鼓舞するとともに、生徒募集のPRの目的があるのです。野球やサッカーなどのメジャーな競技だと、自治体が庁舎や駅に垂れ幕を設置してくれるので、宣伝効果バツグンです。
私は私立の学校法人の評議員や同窓会の役員を務めていますが、生徒募集が議論になると決まって、「野球部はなぜ県大会ベスト4もいけないのか」「サッカー部は練習が休みの日が多いと聞くがなぜか」との声があがります。
同窓会にとって、愛する母校が定員割れなど許せません。手っ取り早く生徒を集めるには、スポーツで有名になるのが一番というわけです。
また、母校が全国大会に出場ともなれば、この上なく母校愛がくすぐられます。この味は経験した者にしかわからない、忘れられないほど甘美です。(私も昨夏経験しました)
◆親と同窓会を黙らせる「印籠」
「子どもの夢」を前面に反対する保護者たち。
「母校愛」を語って抵抗する同窓会の面々。
容易に想像がつこうというものです。
学校側からすれば、「子どもの夢」と「母校愛」を出されては、返す言葉もないでしょう。でも、この春から、両者を黙らせるもの、いわば水戸黄門の印籠を手に入れるのです。
「国の方針です」
この一言で両者を黙らせることに成功したとしても、問題はその後です。
実は、1997年に当時の文部省が、「中学校は週2日以上」「高校は週1日以上」と指針を示したにもかかわらず、学校現場にはほとんど浸透することはなく、現在にいたっています。
学校の部活動は、誰もが平等に低いコストでスポーツや文化に触れることができる機会を提供していると考えています。世界でも他には存在しない制度で、これはこれで残していくべきです。
ただ、本来の学業にまで支障が出るような長時間の活動には疑問がありますし、指導する教師の不払い労働で支えられているのも間違っています。
休養日を増やすことだけでなく、大会の数を減らしたりするなど、勝利至上主義を前提とした部活のあり方を見直していくべきです。
以上、『国が部活動に「休養のススメ」 親と同窓会が抵抗か』でした。